■Dialogue(一緒に話す場)
〜それぞれのGiFT Curveを使った話を終えて〜
くぼけん:山田さんのGiFT Curveの話を聞いていて、山田さんは、自分から最初の一歩を踏み出した瞬間が多い気がしました。その気持ちはどこから出てきているのでしょうか? その時々で躊躇はしませんでしたか?
やまちゃん:私の中には、「わくわく」がつねにキーワードとしてあって、楽しそうだな〜と感じるかどうかが判断の基準になっています。そのため、自分から興味を持ったことをやってきたので、あまり躊躇はしてこなかったかな。
カーブにも書いたけれど、小3の時の先生をはじめとして、周りの大人には恵まれていました。身近に私の可能性を信じてくれる大人たちがいて、「いいじゃん、やってみなよ」って言って、背中を押してくれていたんです。
くぼけん:それでもこれだけいろいろな第一歩を踏み出すには、反対意見もたくさんあったと思うのですが、そんな時はどんなスタンスをとってきたのですか?
やまちゃん:確かに反対意見をもらうことはあります。でも私は、それらはあくまで参考意見ととらえて、最終的には自分との対話で決めるようにしているんです。それに、実は結構頑固だから、「できない」と言われたら、その分余計に「やって証明します」という気持ちになるんです(笑)。
ふみ:私が興味を持ったのは、最初の一歩を踏み出し、それをやり続ける過程で、山田さんにとってゆずれないことってどんなことなのか、というところです。何かモットーみたいなものはありますか?
やまちゃん:一番は、自分に正直であることですね。「自分」って何だろう、ということにも最近は興味があります。でも、自分に正直というよりも、「自分の心」に正直でありたいと思っているかな。
今のような事業をしていると、社会的企業として良いかどうかよりも、自分のハピネス(幸せ)を横に置いて、社会にとってより良いことをしないといけない、ということを言われることがあるんです。でも、自分がわくわくすることや、幸せだと感じる気持ちを持ちながらやっていきたいと思っています。正直なところ、これまでにはそんな気持ちがなくなった時期もあったけれど、それではやり続けることはできないと感じています。とは言っても、フィリピンでの活動に関してはシビアですよ。個人的には面白そうと思える事業でも、フィリピンの子供たちに幸せが循環するものでなければやりません。どんなに素晴らしい企業が一緒にやろうと言ってくれても、子供たちに幸せが回っていくかどうかをとことん追求する姿勢は崩したくはないです。
ふみ:子供たちに幸せが回っていくかどうかというのはどう判断するのですか? 一度やってみて考えるのか、それとも、いろいろな人に話を聞いて判断するのでしょうか?
やまちゃん:それは、時と場合によりますね。見切り発車する場合もあるけれど、じっくり考えて判断する場合もあります。フィリピンの活動メンバーには相談しますよ。それは大事にしています。彼ら(WAKU WORK FAMILY)がわくわくしなければやりません。カフェや美容室など、私がいなくても現地で回すべきものもあるし、それらは特に、彼らの判断に任せることも多いです。
ふみ:いままで自分の気持ちに沿ってやってこられた中で、やってみてよかった、と思うことは何ですか?
やまちゃん:難しいなぁ……全部ですね! というのは、物事はいろいろな形でつながっていると感じているんです。現在のことも、10年後にどうつながっていくかはわからないけれど、これまでを振り返ると、ひとつひとつがつながり合って今があると思えるから。
サイパンで、あのフィリピン人のおじちゃんに会っていなかったら、今の自分に出会えていなかったし。あの時サイパンに行ったのも、今思えば1つのターニングポイントになったしね。だから全部大切なんだと思っています。
くぼけん:大学生が海外に行くことについては、何か思うことはありますか?
やまちゃん:まだわからないです。自分が行ってみた経験からしか語れないですね。でも、今は、自分の弟には海外に出てみることを勧めていますよ。海外に出ることで、最終的には自分の町や国のことを考えるし、自分にベクトルが向いていくと思うから。
私自身、オーストラリアを知りたくて留学したけれど、いろんなことを知り、気づくこともいっぱいあった一方で、滞在中にホームシックになって家族について考えたり、街中にゴミ箱が多くて道がきれいなのにびっくりしながらも、地元 湯河原の町をきれいにするには何ができるのか、を考えたりするようになりました。
また、フィリピンのスラムでは、「Are you happy?(幸せですか)」と聞いて回ったんです。すると、みんな笑顔で、「家族といるから幸せだよ」という答えを返してきた。その時は、「スラムにいる=幸せじゃない」と決めつけていた自分に気がつきました。
海外では、そんな風に、自分自身にいろいろなことを問いかける経験ができたので、それはみんなにも経験してほしいと思います。
それに、日本を出てみると、世界は広いと思いますよ。もし、今いる場所で苦しく思っている人がいたら、海外に出てみて、と伝えたい! 今いるところとは違う経験ができるし、違う視点も持てると思います。
くぼけん:自分も、海外に行った時には自分の家族について考え、帰ったら親孝行をしよう!と思いました。実際に、帰国後は父と旅行に行きました。海外に出たから見えてた価値観や大切にしたいこともあったし、支えてくれる人への感謝の気持ちがわき上がりました。日本で大学をストレートに卒業していたら、親孝行しようとは思わなかったかもしれません。
やまちゃん:ちょっと話が飛んでしまうけれど、実は今、軽井沢に住みたいな、と思って、その準備をしているんです。でも、ずっと湯河原で育ってきて、家族、特におばあちゃんが好きな自分もいます。山田貴子個人として考えると、不思議な感じなんですが……。WAKU WORKの活動を軽井沢でしたいと思っているけれど、同時に、湯河原でおばあちゃんと一緒にいたい、と思う自分も確かにいるんですから。
WAKU WORKは現地の仲間たちと、「ファミリー」という呼び方で家族のようなつながりをつくっています。彼らが家族を思い、家族と毎日一緒にいて、子供の成長をずっと見られるというのは、すごく幸せなことだと感じるんです。彼らをうらやましく思う時もありますよ。そういう時には、山田貴子個人として、おばあちゃんの近くにいたいな、もっと一緒に過ごしたいな、と思うんです。
そんな気持ちに関連することで、自分が大学生の頃に知りたかったことをこの1年でいろいろ知ることができたんです。最近大学でもよく話しているのですが、学生の頃には、何事も選択肢は2つと思いがちでした。私の場合だと、生活拠点はフィリピンか湯河原か、と思ってしまうところですが、自分がやりたいことを偽って、「これを選びました!」というよりは、自分のやりたいことは、全部、自分の周りに置いておいていい、ということです。
例えば、フィリピンでの事業をやって、湯河原でも子供に関わり、体育を教えて、家族とも一緒に過ごして……と、やりたいことを全部自分の近くに置いておくんです。そして、「それをやりたいんだ」と発信することが大切だと、最近は強く感じるんです。
いま務めている体育の先生についても、自分から「やりたい」という意志を発信していなかったら、話は来なかったと思います。「全部はやれないでしょ?」と思うことでも、ライフワークとしてできることがあるかもしれないんです。2つのうち1つだけを選択するのではなく、やりたいことを自分の身近に置いておくことで、いろんなチャンスをちょっとずつ手にすることができる、ということを伝えていきたいです。
また、最近、より強く思うようになったのは、いろんな生き方があっていいんじゃないかな、ということ。
今、自分自身が、これからどう生きていきたいかを考えている最中ですが、軽井沢や湯河原、フィリピン、そして最近足を運んでいる福岡と、つねに自分がわくわくする場所に身を置いておきたいんです。心も体もそうしておきたい。たとえ非常識なことだったとしても、自分の気持ちや心に正直でありたいし、そうあろうと思っています。
今は、そんな生活をノマドとも違う形でやりたいと思っているんです。畑もやりたいって思い始めているんですよ(笑)。例えば、ネギは収穫できるようになるまでじっと待たないと手に入らないですよね。そんな風に、待つ楽しみもいいな〜、と思うんです。でも、俗に言われる「スローに生きる」というよりも、日々の営みの中で、「待たないといけないから待つね」という感覚を大切にしていく感じ。そんな自由でのびのびとした気持ちを大切にして、ライフスタイルはもっと自由でありたいと思っています。
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